メモリースロットをちょっと深堀りしませんか?
今回のテーマは【角人軍兵士Oscarの誓い】です。
なお、文字の色分けは、これまでと同様に以下のように使い分けていきます。
俺は「角人軍」に所属する兵士だ。俺たち「角人軍」の行動理念は、豊かな生活を手に入れ、より角人種族を繁栄させること。今は亡き『将軍』により結成された組織で、この汚れた大地を移動しながら、生き残った仲間を大勢助けてきた。
「角人軍」は基本的に少人数で部隊を作り、それらを拠点付近の警備に当てたり、探索に派遣したりしている。今回俺の部隊に与えられた役割は、巨大生物を狩り、食糧としてその肉を持ち帰ることだった。任務はつつがなく進行し、無事に巨大兎の肉を狩り終えた俺たちは、そのまま拠点へと戻るべく歩を進めていた。
視界の悪い森の中を進んでいると、少し離れた位置から人々の話し声が聞こえてきた。拠点へ帰る最中の別の部隊だろう。そう思った俺たちは、彼らと合流するべくその気配に近づいた。しかし、そこにいたのは仲間なんかじゃなかった。…「角ナシ」だ。それも武装した、「角ナシ」の部隊だった。
「角ナシ」の話は俺たち角人の間では有名だ。だが、実際に見るのはこれが初めてだった。仲間からも動揺している気配が伝わった。それもそのはず、俺たち角人にとって「角ナシ」の存在は、恐怖の対象でしかないのだ。俺たちは生まれてからずっと、大人たちの語る「角ナシ」からの非道な行いの数々を聞きかされて育った。かつて角人は、「角ナシ」どもに支配されていた。人体実験をされ、生物兵器として戦争に投入され…道具として使い物にならないと判断されれば、問答無用で殺された。そこに角人としての意思はなく、あるのはただ、「角ナシ」への絶対服従のみだったという。これは角人にとっての、暗黒の歴史だ。先人たちは代々、「この屈辱を決して忘れぬように」と、彼らの残虐な行いを後世に伝え続けてきたのだ。
…そんな「角ナシ」が今、突然、目の前にいる。正直俺は、恐怖で動くことができなかった。幸運にも、「角ナシ」部隊の方もすぐに行動することはなく、こちらの出方を窺っているようだった。緊張が走る。目の前にいるのは、俺たちの祖先を長い期間苦しめてきた、憎き「角ナシ」の末裔だ。もしここで逃げればどうなる?狡猾で悪逆非道な連中のことだ、後をつけられ、拠点の安全が脅かされるかもしれない。そうなれば角人は繁栄するどころか、存亡に危機に立たされてしまう…。
俺は仲間に小さく合図を送ると、背負っていた槍に手を伸ばす。そして「角ナシ」目掛け走りだした。「角ナシ」は咄嗟に何かを構え、こちらに向けて撃ってきた。俺たちは慌てて木陰に身を隠す。間違いない、あれは旧時代の兵器、「銃」だ。世界が汚染に包まれる前の時代に作られ、我々の祖先たちも争いごとに用いていたという話を聞いたことがある。「角ナシ」たちは自らの非力さを補うために、高度な技術を身に着け、古代の兵器を復活させていたのか…。付近の巨木が「角ナシ」の銃で撃たれ、幹がえぐられる。あれを受けたらひとたまりもないだろう。
「角ナシ」部隊からは絶え間ない発砲が続いた。幸いにも、この森は遮蔽物が多い。なんとか弾を凌ぐことはできるが、俺たちはその場から一歩も動けなくなってしまった。槍を持つ手が震える。怖い。このまま撤退するべきだ。そんな考えが頭をよぎった。しかし…本当にこのままおめおめと逃げ帰っていいのか?俺たち角人は、目の前の「角ナシ」どもに長い期間苦しめられてきたんだ。奴隷として扱われ続けてきた屈辱を、自由意志の許されなかった先祖の無念を、晴らせるのは今しかない。ここで俺たちが逃げたら、また、「角ナシ」に怯える暗黒の日々が始まってしまう。
…俺は大きく深呼吸をし、目標に狙いを定める。そして意を決して、木陰から飛び出した。銃弾が頬をかすめる。しかし、痛みは感じない。俺は「角ナシ」の喉元目掛け、槍を突き刺した。血しぶきが舞い、その「角ナシ」は地面に倒れた。部隊の仲間も俺に続き、雄たけびを上げながら「角ナシ」どもに殴りかかる。もう恐怖はない。俺たちはコイツらを殺すことができる!あの震えていた時間はなんだったのかと思うほどに勝負は一瞬で決着し、その場に立っているのは角人のみとなった。一部の「角ナシ」は逃がしてしまったようだが、そんな些細なことは気にならなかった。勝ったのだ、「角ナシ」に。この事実が、どれだけ喜ばしいことか!俺たちは歓喜に打ち震え、抱き合って涙した。この時の感動は、生涯忘れることはないだろう。
その後、部隊は拠点に帰還した。今回の件を「角ナシ」どもの亡骸から回収した武器や装備品を証拠としつつ、軍へ報告する。俺たちは、一躍英雄となった。先祖代々続く因果を断ち切った功績を、多くの同胞から賞賛された。そして何より、この件によって、俺たちは「角ナシ」を殺せることが証明されたのだ。これは今まで「角ナシ」に恐怖するしかなかった角人にとって、大きな一歩となった。これからは、「角ナシ」に報いるための新時代が始まるんだ。軍は「角ナシ」の動向を探るため、新たに調査部隊を派遣することを決定した。隊長となるのはこの俺だ。先祖の仇のため、そして今後の角人の繁栄のために。この責務を全うするとここに誓おう。
地上探検家Hillmanを襲撃したのは “大柄で、頭部に動物の角を模した装飾品を装着” している “数人の集団” である。Hillmanは “明らかな殺意を感じ” たと言っている。ここからHillmanが目撃したのは「角人軍」であり、「角ナシ」の動向を探るために結成された調査部隊だと考えた。ただ、気になる点は『大学』勢力のHillmanが角人の存在を知らなかったことだ。『大学』と『軍隊』は共同で『強化兵士』の開発を行っていたはず。 “極秘” なので研究室が違ったから知らなかっただけだろうか?(隣の研究室は外国より遠い?)
Chicoは “角人は野蛮な奴らだと、『キャラバン』の大人たちが言っていた” と回想している。Oscarが逃がした「角ナシ」が『キャラバン』のメンバーで、『キャラバン』に帰還した後にこの体験を報告したからだと考えた。おそらく、『キャラバン』側も角人専門の調査部隊なるものを結成し、コミュニケーションを取ろうと試行錯誤したのだろう。残念ながらそれが叶わなかったので “同じ人間の言語をしゃべるが、話が通じる相手ではない” という評価になったと考えた。
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