【商人Sidの記憶】をちょっと深堀り

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メモリースロットをちょっと深堀りしませんか?

今回のテーマは【商人Sidの記憶】です。

なお、文字の色分けは、これまでと同様に以下のように使い分けていきます。

  • 『』で囲まれた単語
  • 「」で囲まれた単語
  • なんとなく重要そうな単語

商人Sidの記憶

俺の名前は「Sid」。俺たちの先祖は商売を専門にしていた組織だったらしくその生き残りである俺たちも同じように商売で生計を立てている。

俺は今、数十人の商人コミュニティの中で暮らしているがこの辺りではほとんど植物は育たないし、もちろん普通の動物なんて見たこともない。俺のコミュニティで採れるものと言えば、「コショウ」くらいだがコショウでは腹は満たせない。だから俺たちは、コミュニティの近くでわずかに採れる果物や木の実を分け合って、なんとか日々の飢えをしのいでいた。

そんなある日、コミュニティの外に出て商売をしていた友人が「肉」を持ち帰って来た。なんでも、旅の途中で怪我をした角人を応急処置してやったらしく、そのお礼として「巨大生物の生肉」を少し分けてもらったのだと言う。コミュニティの人間は「」なんて食べたことがないやつばかりで俺たちはどんな味がするのかとワクワクしていたが、その肉は長旅の間に腐ってしまって、とんでもない悪臭を放っていた。誰もが食べるのを諦める中、俺はあることをひらめいた。

「『コショウ』を使えばこの悪臭を消すことができるんじゃないか?」

腐った肉に大量のコショウを振りかけ、よく焼いて食べてみると見事に臭みは消えていた。それどころか、コショウの程よい辛味も相まって極上の味になっていたのだ。

「これは角人に売れるぞ」

そう考えた俺は、すぐに大量のコショウを持って角人集落へと出発した。

数日歩き続けると、ようやく角人集落に到着した。ここの角人たちの食生活は巨大生物の肉が中心で、腐りかけの肉を食っているやつも大勢いた。彼らにコショウの魅力を伝えることができれば、飛ぶように売れるはず。さっそく俺は角人たちを集めて、コショウの魅力を売り込んだ。

「集落のみなさん!みなさんがいつも食べている巨大生物の肉はコショウを使えばもっと美味しく食べることができるんです!日々の食事を豊かにするためにも、1つ買ってみてはいかがでしょう?」

俺は大きな声で彼らに呼び掛けた。しかし、彼らの反応はいまいちで

「外の人間が持ってきたものなんて食えるか!そもそも食事に味なんて
求めちゃいない。さっさと帰れ」

と言われてしまった。だが、この程度で引き下がるほど、俺はヤワじゃない。

「…わかりました。ではせめて私の得意料理を振る舞わせてくれませんか?これもなにかのご縁でしょうから」

と、少しだけ用意しておいた巨大生物の肉を使い、彼らの目の前で、コショウを使った「巨大生物肉のステーキ」を作り始めた。コショウをたっぷりまぶした肉を熱々の鉄板に乗せて焼いていくと、肉の脂の匂いとコショウのワイルドな香りが辺り一面に広がった。

食欲が刺激される。さっきまでは冷ややかな目で俺を見ていた角人たちも、もう俺の作るステーキから目が離せない、といった様子だった。俺は焼き上げたステーキを太めに切り分けて一切れずつ配ってやる。「食事に味なんて求めちゃいない」などと言っていた角人たちも、結局はその芳醇な香りに負けてステーキに食らいついた。彼らは「こんな美味いものは食ったことがない!」という表情を浮かべ、初めて食べた極上のステーキに感動しているようだった。その後、その場にいた角人全員が「そのコショウをくれ!」と言って俺のもとに迫って来て、リュックいっぱいに持ってきたはずのコショウは、一瞬で売り切れてしまった。

俺はコショウと引き換えに巨大生物の毛皮や肉、骨を使った装飾品などを大量に譲り受けた。こうして角人集落での商売は大成功に終わったわけだが、別に俺に才能があったわけじゃない。俺はただ、祖父や父から教わった「相手に『欲しい』と思わせろ!」というたった一つの「商売の鉄則」に従っただけだ。つまり、角人たちは口頭で魅力を説明されても「コショウが欲しい」とは思わなかった。だが、実際にコショウを使ったステーキを目の前に出されて「このステーキに使われているコショウがどうしても欲しい!」と思ってしまったというわけだ。商売の世界では、今回のようにどんな手段を使っても「欲しい」と思わせたら勝ちなのだ。

これ以降も、俺は各地にある防人集落や普人集落を訪れ、「商売の鉄則」に従ってコショウや加工肉を価値あるものと交換していった。そうして富を築いた俺は、さらにこの事業を拡大するべく、他の「商人」たちを集めて、食品の加工・貿易を行う「食品会社」を設立した。「俺たちならもっと大きなビジネスができる」。この時、俺はそう確信していた。

このスロットで「事実」として読み取れること

  • Sidの商人コミュニティ周辺で採れるのは「コショウ」だけ
  • Sidをはじめ、コミュニティのメンバーは肉を食べたことがなかった
  • お礼でもらった「巨大生物の生肉」が腐っていたので、試しに「コショウ」を振りかけて焼いたら臭みは消え極上の味になっていた
  • 商売の鉄則」に従って角人にコショウの魅力を伝えた
  • Sidは食品の加工・貿易を行う「食品会社」を設立した

考察テーマの設定

  • これはいつ頃の話か?
  • ITO食品は地上時代からあった?

これはいつ頃の話か?

植物は育たないし、もちろん普通の動物なんて見たこともない” とあるので、『死の汚染』の後だと想像できる。ただ、このスロットには防人の存在も書かれている。メモリースロット【兵器部部長「Jim」の記憶】より、防人は対角人兵器として開発されている。つまり、防人の存在がすでにある時点で『リメア半島』をめぐった戦争の後だと分かる。もう浮遊大陸に来ているのかと考えてみたが、それでは “植物は育たないし、もちろん普通の動物なんて見たこともない” がメモリースロット【語り部Liberの「浮遊大陸伝承」】の “すべて最初から用意されていた” という記述と矛盾する。だから、まだ地上だろう。

 

ITO食品は地上時代からあった?

第四章のStory Slotに【ITO食品の歴史-「Sid」の自伝より-】がある。これはSidがITO食品の創立者であることを示唆するタイトルだと思う。そして、本スロットでSidは「食品会社」を設立している。これがITO食品の場合、ITO食品は地上時代から存在したことになる。「商売の鉄則」のような知識・ノウハウ系は場所を選ばないが、会社などの組織となると物理的な場所も重要だと思う。地上時代からあったとして、浮遊大陸へ移住する際、どうやって移動してきたのだろうか?トレジャーハンターたちが何度も行き来しながら持ち運びしたのだろうか?

Reference

  • Memory Slot【【兵器部部長「Jim」の記憶】】
  • Memory Slot【語り部Liberの「浮遊大陸伝承」】
  • Story Slot【未知の危険が潜む『地上』】

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