メモリースロットをちょっと深堀りしませんか?
今回のテーマは【Felipeの実験記録-精霊Hydraのハッキング記録から-】です。
なお、文字の色分けは、これまでと同様に以下のように使い分けていきます。
…『大学』ネットワークを経由し、「強化兵士」に関するデータを検索します…。
「強化兵士」に関するデータファイルが26件見つかりました。
どのファイルを閲覧しますか?…「研究者Felipeの実験記録」を再生します…。
…『実験体:Ogre』の性能は、想定以上に素晴らしいものだった。彼らは超人的な筋力と鋭敏な感覚器官を持ち合わせており、身体能力を測るためのテストをいくつも行ったのだが、この『Ogre』は、どの項目においても驚異的な数値を
記録してみせたのだった。
…実はこれまでの研究の中でも何度か強靭な肉体を持つ個体の生成には成功したことがあった。しかし、それらの試作品はどれも自分たちの有り余る力を制御できず、兵器としては役に立たないものばかりであった。
しかし、今回のこの『Ogre』はどうだろうか。この子には「知性」が宿っている。誕生してからまだ数日しか経っていないにもかかわらず、彼は私の指令を理解し、それを忠実にこなそうと努めている。まるで人間の頭脳をそのままに、身体能力だけを大幅に底上げしたかのような、まさに「新人類」である。これの量産ができれば、間違いなく「戦争」のやり方自体を大きく変えてしまうような、革新的な兵器になるだろう…。
この日から私は『Ogre』と同じように優秀な「強化兵士」個体を再現性高く生産できるようにするべく、より科学的な視点から複数のテストを行い、彼の、その美しい肉体のメカニズムについて理解を深めようとしていた。『Ogre』は高い治癒力も持っており、どれだけ過酷なテストを行って、筋肉に負荷をかけてもまた、テストの中でその肉体に軽度の傷をつけてしまったとしても数日後にはすっかり元通りに回復しているのであった。
本格的なテストを始めてから20日が経過した。こなした耐久テストの数は優に1000回を超えていた。この日はいつも通り、特別実験室で『Ogre』に高重力負荷を与え、骨格構造の耐久性を測るテストを行っていた。その最中だった。今までどれだけの負荷を与えても表情一つ変えなかった『Ogre』は床に倒れこんでしまった。
ただちに重力発生装置を止めて、様子をうかがう。…特段、いつもと変わった様子はない。呼吸器系や臓器の働きにも乱れは見られない。『Ogre』自身も自分の身に何が起きたのかわかっていないようだった。「何か異常を感じたら、すぐに知らせてくれ」マイク越しに私がそう声をかけると『Ogre』は黙ってうなずくのだった。
しかし、それ以来『Ogre』は目に見えて弱っていった。テストでも以前のような力を発揮できず、けがや筋肉の回復も遅くなり、与えた指示に対してのレスポンスも悪くなっていく一方だった。数日間の休養を与えても、その様子は変わらない。ただ彼が衰弱していくのを見ているだけ…。何もしてあげられない自分が歯がゆかった。そして昨日の晩、『Ogre』は亡くなった。
私は一連の実験を振り返り、『Orge』の死の原因を「精神性の脆弱さによるもの」と結論付けた。度重なる実験に耐えきるためには優れた肉体や頭脳のほかに、強靭な精神力が欠かせない。これは『Orge』の死なくしては学べないことであった。完全体の「強化兵士」を作るためにはもう一つ、新たな発明が必要になりそうだ。『Orge』の亡骸は今も、ここ軍事開発研究部門内部にある私の個人研究室に安置してある。彼の尖った頭部を優しくなでながら、必ずこの強化兵士の発明をやり遂げるんだと誓うのだった。
『Ogre』は最初の角人である(詳しくは軍事開発研究部門Felipeの「強化兵士」実験記録の深堀り動画をご覧ください。)
メモリースロットのタイトルには “精霊Hydraのハッキング記録から” とある。 “精霊” なので第二章で登場したウルちゃんのように情報を食べて成長する存在なのだろう。そして “ハッキング” なので、この精霊は『大学』付きではないと考える。『大学』以外の勢力が “精霊Hydra” を使って『大学』のデータを食べさせ、『Ogre』に関するデータを集めていたのではないか?メモリースロット【兵器部部長「Jim」の記憶】には、角の生えた兵士(角人)の対策に関する記述がある。角人の対策をする過程でその開発経緯や進捗状況などは貴重なデータとなるであろう。このように考えると “精霊Hydra” は『企業』または『政府』が所有する精霊だと考える。
我々の世界で一般に「精神的な脆弱さ」と言えば、次のようなものがあるだろう。
そして『Ogre』は、他人の評価に過剰に左右されていたと考えた。スロットには “私の指令を理解し、それを忠実にこなそうと努めている” とある。ここから『Ogre』はFelipeへの忠実さが強く、自身の本音や感情を抑えることが習慣化していたと想像した。そのような状況では、自分のニーズに鈍感になり、自分を守る力(自己防衛)も弱くなるだろう。また、忠実であろうとする人ほど、他者の評価を気にする傾向が強くなりやすい。これは「新人類」の『Ogre』も同様ではないだろうか。だから “耐久テストの数は優に1000回を超えて” いるような状況でも「まだ頑張らなきゃ」と走り続けてしまうのではないか。その結果、心身の不調に陥ってしまったと考えた。
メモリースロット【『実験体Ogre』Cecilの記憶】では、Cecilが何かの投薬を受けている様子が書かれている。おそらくこれは「精神性の脆弱さ」を改善するための実験だと考える。
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