【『実験体Ogre』Cecilの記憶】をちょっと深堀り

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メモリースロットをちょっと深堀りしませんか?

今回のテーマは【『実験体Ogre』Cecilの記憶】です。

なお、文字の色分けは、これまでと同様に以下のように使い分けていきます。

  • 『』で囲まれた単語
  • 「」で囲まれた単語
  • なんとなく重要そうな単語

『実験体Ogre』Cecilの記憶

…ああ、また実験の時間が来ちゃった。毎日決まった時間にこの牢屋から連れ出され、私は実験室へと向かう。そこでは頭の痛くなる空気を吸わされたり、新兵器で体を傷つけられたり、とにかく散々な目にあうんだ。逃げ出したいほど嫌なはずなのに、私たち『Ogre』は頭の中の『』のせいで、逆らえないようになっている。

痛くて、怖くて、苦しい。なんでこんな目に遭わなきゃいけないんだろう…。私は何も悪いことなんてしてないのに…。今度は悔しくてむしゃくしゃする気持ちが湧き上がってくる。もうこんな生活は嫌だ。早くここから出してよ!感情がコントロールできなくなって、頭が真っ白になる。

…気が付くと私の手や足は赤く腫れて、牢屋の鉄格子には新しい傷ができている。体もだるい…。外の研究員が私のことを冷たい目で見ながら、こう話す。

「おい、実験の時間だ。いくら暴れても無駄だからな」
「Cecilの状態は?」
「依然として、不安定な状態が続いています」
「…さて。コイツを飲んで、どう変わるかだな」

今日の実験は、なんだか変だった。不味い薬を飲まされて、実験室の床の上で長い間じっとさせられていた。いつもより研究員がたくさんいて、みんな私を見ながらなにかを話し合っていた。を飲んじゃった私は、いったいどうなっちゃうんだろう?体が痛くなるのかな、息が苦しくなるのかな?

不安でいっぱいになった頭の中がだんだんと真っ白になっていったその時。突然、研究員に「出ろ」と言われ、私は牢屋へ戻らされた。実験が終わって良かったけど、『』で動けない私を奴らに馬鹿にされているようで悔しかった。イライラが収まらない中、自分の牢屋の前に立つ。すると、中に誰かの姿が見えた。私と同じように角を生やした、女の『Ogre』だ。どうして、私の独房に『Ogre』がいるのだろう?

私がその『Ogre』を睨みつけながら近寄ると、彼女はにこにこしながら「はじめまして、『Ogre』さん」と話しかけてきた。…この『Ogre』、ちょっとおかしい。どうして、こんな地獄みたいな場所で笑っていられるの?あなただって、あの辛い実験を受けているんでしょ?変わり者の『Ogre』は、自分のことを「Kalla」と名乗り、その日から私と同じ牢屋で管理されるようになった。

Kallaはいつもニコニコしていた。まるでこの生活を楽しんでいるかのように、笑顔を絶やさなかった。だけどそんなKallaが、唯一笑わない時があった。それは、実験から戻った私がイライラしている時。その時だけ、彼女は悲しい顔をするのだ。なんであなたがそんな顔をするの。泣きたいのはこっちの方なのに。…そう言おうと思ったけど、Kallaがもっと悲しい顔をするような気がして、言えなかった。私はイライラをぐっと我慢しながら、牢屋での日々を過ごすようになった。

ある日、私はいつもより辛い実験を受けていた。身体の耐久テストだとか言って、武器を持った兵士たちと素手で戦わされたのだ。…ああもう、どうしてこんな勝てっこない奴らと戦わなくちゃいけないの…!私はイライラをバネにして戦ったけど、武器を持つ相手には敵わなかった。実験が終わる頃には、両腕は自分の血で真っ赤になっていた。それでも研究員がしてくれるのは最低限の手当てだけ。ズキズキと痛む腕を抱えて、実験室を出る。

私の頭の中は、勝てない悔しさとイライラでいっぱいだった。牢屋に戻ると、Kallaが驚きの表情でこちらを見ていた。そんな目で私を見ないで。余計に惨めな気分になるから。そう思って距離を置こうとすると、彼女は私を抱きしめ「そんな傷でよく戻ってきたわ。貴方、とっても強い子なのね…!」と語りかけてきた。その瞬間、胸がじわりと温かくなって、私はその場で泣き出してしまった。Kallaが私のことを心配してくれた。それが嬉しかった。床に座り込んだ私の頭を、Kallaはそっと撫でてくれる。彼女のおかげか、傷の痛みはすっかりなくなっていた。

Kallaが現れてから数週間。私はなんでもKallaに打ち明けるようになっていた。彼女は聞き上手で、私の話をたくさん聞いてくれた。あの実験は最悪だとか、研究員のあいつは嫌いだとか。私が文句を言うたびに、Kallaは「今日もよく頑張ったわね」と微笑みながら私の頭を撫でてくれるのだ。彼女に撫でられると穏やかな気持ちになり、私はすっかりイライラすることがなくなった。

ある日、私はKallaに自分の夢についてお話した。
「この施設の外にはね、私たちがまだ見たこともない、楽しい世界が広がっているんだよ」
Kallaは目を輝かせて、私の話を聞いていた。
「私の夢は、外の世界を冒険すること!…そうだ。Kallaも一緒においでよ。きっと楽しい冒険になるよ」
Kallaは強く頷いた。その時から、「の夢は、「私たち」の夢になった。「うん!実験が全部終わったら、一緒に行こうね!」
「約束だよ!」
「うん。約束…」

常に落ち着いていて、笑顔で接してくれるKalla。私と同じように辛い実験を受けているはずなのに、いつも元気に振舞っているKalla。すっかり彼女と仲良くなっていた私は、Kallaを「お姉ちゃん」と呼び慕うようになった。

お姉ちゃんと暮らし始めてから数か月が経った私は、実験体としての日々を前向きに受け入れられるようになっていた。それはもちろん、研究員たちの役に立つためではない。早く全ての実験を終わらせて、大好きなお姉ちゃんと一緒に外の世界へ冒険に行くためだ。どんなに辛い実験も、お姉ちゃんと夢を語り合ったあの日を想えば頑張れた。それに、お姉ちゃんは私が実験を頑張るたびに、「今日もえらいわね、Cecil」と微笑みながら優しく頭を撫でてくれる。彼女の笑顔を見られるなら、私はどんな傷を負っても辛くはないのだ。

お姉ちゃんは私のすべて。お姉ちゃんのためならなんでもできる!いつだったか、研究員にお姉ちゃんのことを聞かれたとき、私は自信をもってそう言った。研究員はメモをとってお姉ちゃんのことを書き留めていた。この人たちもお姉ちゃんのことが気になるのだろうと思って、Kallaについて、小一時間ほど語って聞かせたこともあった。

ある日実験から戻った時、牢屋の中にお姉ちゃんの姿がなかった。早く戻ってこないかな、早く私をなでてくれないかな。一時間待って、まだ実験中だろうと自分に言い聞かせた。三時間待って、実験が長引いているのだろうと深呼吸をした。半日待って、彼女の身に何かあったのではないかと不安になり始めた。一日経過して、戻ってこないなんて、絶対におかしい。

何か事故に巻き込まれたの?もしかして、このまま牢屋には戻ってこない?嫌な予感が私の頭の中を埋め尽くして、たまらず大声で叫んだ。異変に駆け付けた研究員が見えて、鉄格子を揺らす手に力が入る。お姉ちゃんが戻ってこないの!お姉ちゃんをどこへやったの!?私の話を聞いた研究員は足早にその場からいなくなり、すぐに別の研究員を連れて牢屋の前に戻ってきた。

「予定期間よりも前に、薬の効果が切れたようです」
「安定性は向上しているようだが、まだ改良の余地はありそうだな。…とりあえず、追加のを飲ませておけ」

研究員が床に放り投げたを拾い上げる。このを飲んだら、この人はお姉ちゃんを連れてきてくれるのかな?私はお姉ちゃんに会いたい一心で、そのを飲みこんだ。ほら、言う通りを飲んだよ!早くお姉ちゃんを連れてきて!はやくはやくはやく!

叫び続ける私の後ろで、「ただいま」と声が聞こえた。振り向くと、牢屋の奥に私の大好きなお姉ちゃんの姿があった。ああ、お姉ちゃん!なんだ、戻ってきてたんだ!私はすり寄るようにお姉ちゃんに近づき、膝枕をねだる。ねえ、私を撫でて。寂しかったんだから、いっぱい甘やかして。

お姉ちゃんは「心配かけてごめんね」と言って私の頭を撫で始める。ううん、大丈夫だよ。お姉ちゃんもこうして戻ってきてくれたし…。…ねぇ、あとちょっとでこの実験も終わるのかな…?そしたら2人で外の世界を冒険できるね。私たちの夢が、約束が、もうすぐ叶うんだよ。あと少しだけ頑張ろうね、お姉ちゃん…。

このスロットで「事実」として読み取れること

  • Ogre』はキャラ名ではなく種族名
  • Ogre』は実験が逃げ出したいほど嫌だが、頭の中の『』のせいで逆らえない
  • Cecilがを飲んだあとにKalla(お姉ちゃん)が登場
  • CecilはKallaに依存している

考察テーマの設定

  • Cecilは『Ogre』の「精神性の脆弱さ」を改善するための実験体
  • の正体は『ダブル』?

Cecilは『Ogre』の「精神性の脆弱さ」を改善するための実験体

メモリースロット【Felipeの実験記録-精霊Hydraのハッキング記録から-】でFelipeは、最初の『Ogre』が死亡した原因を「精神性の脆弱さによるもの」と結論付けている。Cecilはその「精神性の脆弱さ」を観察しつつ、それを克服する手段を探るための実験体だったのではないだろうか?

Cecilは “感情がコントロールできなくなって、頭が真っ白になる” まで追い詰められていた。私はこれが『Ogre』の「精神性の脆弱さ」だと考えた。研究員はこれを “不安定な状態が続いています” と表現し、それを聞いた別の研究員が “コイツを飲んで、どう変わるかだな” と発言していた。ここから「精神性の脆弱さ」を克服する手段を試行錯誤している様子が想像できる。

Cecilがコイツを飲んで独房に戻ると、そこには別の『Ogre』であるKallaがいた。ただKallaは実在する『Ogre』ではなく、の作用でCecilが見た幻覚だと考える。なぜなら、の効果が切れた終盤でKallaは消え、再びを内服したら登場したからだ。

人は極度のストレスや悲しみの中で、時に「脳が自分を守るために虚構を作る」ことがある。Cecilは度重なる実験の影響で「精神性の脆弱さ」を発症した。研究員はそれを防ぐためにを投与してみた。それがきっかけでCecilは虚構(幻覚)を見るようになった。Cecilは幻覚の中で理想の存在(Kalla)と対話するようになり、不安や絶望感が和らいでいるのを感じた。研究員もCecilは幻覚を見ていると気付いたのだろう。CecilがKallaのこと語っている様子をメモしていたのは実験ノートであり、Cecilしか認識できない存在(Kalla)のことを記録するためだったと考える。

 

の正体は『ダブル』?

研究員は最初からCecilが幻覚を見ることを想定していたのだろうか?Kallaの登場から研究員がメモを取るまで、けっこうな時間があると想像する。この間、研究員は、なぜコイツがCecilの “不安定な状態” を改善するのか探っていたのではないか?そして、Cecilの言動から彼女が幻覚をみていると気付いた。

このように考えると、は幻覚作用を期待して投与されたものではないと思う。『Ogre』の「精神性の脆弱さ」を鬱のような状態だと考えると、興奮作用を有した薬物がそれを改善できるという仮説を立てることができるだろう。そして、そのような物質として注目したのが『ダブル』である。メモリースロット【Earnieの告発:農村を豊かにした植物の苗】で “興奮作用を有した中毒性薬物の原料、『ダブル』” とある。

『ダブル』に着目した理由はそれだけではない。 “ある日実験から戻った時、牢屋の中にお姉ちゃんの姿がなかった” からの内容で、Cecilが幻覚で得た「心の平穏」や「理想の存在(Kalla)に再会したい」という欲求を制御できていないことが分かる。また、”予定期間よりも前に、薬の効果が切れたようです” という研究員の言葉から、の作用時間が短縮していることも分かる。どちらも薬物の依存が進んでいることを示している。これは『ダブル』が “中毒性薬物の原料” であることと矛盾しないと考えた。

メモリースロット【軍隊の記者Steinの手記】には、『軍隊』と『企業』が協力関係から敵対関係になるまでの概略が書かれている。『軍隊』が『大学』と小競り合いをしているころ、『企業』は『軍隊』に最新兵器とともに『ダブル』も売っていたのでは?

Reference

  • Memory Slot【Felipeの実験記録-精霊Hydraのハッキング記録から-】
  • Memory Slot【Earnieの告発:農村を豊かにした植物の苗】
  • Memory Slot【軍隊の記者Steinの手記】

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